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・NHK 幹部 米紙WP 「首相なぜ非難せぬ」に見る、彼我の新聞の質の著しい差異

アメリカの新聞で、日本で最も有名なものは、リベラル傾向の強いニューヨークタイムズと、保守的傾向のワシントンポストだろうと思う。どちらも高級紙と呼ばれています。

2月11日付けワシントンポストは、電子版で、「NHKの籾井勝人会長と百田尚樹経営委員の発言を」問題視し、「安倍晋三首相が、2人の見解を明確に非難すべきだと主張する社説を掲載した」といいます。http://goo.gl/7o107s  
http://goo.gl/4DrUCx

さらに、日本政府はなぜ明快に糾弾しないのか、「百田氏を指名し、籾井氏の起用を立案した(とされる)のは首相だけに、首相の責任は特に重い」とも書いているそうです。

これを読んで、暗澹たる気持ちになったのは、これがなぜ日本の新聞でなくて、他国の新聞なのか、と思わざるを得ないためです。

日本の新聞は、どうしてこのようなまともな記事、論説がかけないのでしょうか?
このワシントンポストの記事は、他国の新聞でありながら、見事なまでにこの問題の核心的な点をすべて網羅しています。

NHK会長、経営委員問題の核心は、NHKの経営委員は日本国の首相によって任命されている事、会長選びには首相の意向が働いていると思われる事、つまり日本で最高の権力を持つ首相がこれらの人たちを公共放送に送り込んだ、という事にあります。
そして、問題は首相や政権がこれらの人たちと見解を一にしているのではないかという点にあり、さらに首相も政権も一度もこれらの人たちの発言をはっきり問題視していない事にあります。

前者の問題は、ワシントンポストの論説の中で明確に指摘されており、後者の問題は間接的ですが、「なぜ非難しないのか」という言い方ではっきりこれらの人々と決別せよ、あるいは見解を否定せよ、と迫っています。

この記事を読んだ人であれば、他になんの基礎知識もなくても、今何が起きているのか手に取るように分かります。

これに対して日本のメディアはどうでしょうか?公共放送のトップが、非人道的な制度をあたかも問題ない制度のように言い、何万人という他国の人が犠牲になった歴史的事実をなかったことのように言っているという絶対に許されないように状態に対して、驚くほどに少ない報道しかなされていません。これは圧倒的に大きな問題なのに、発生以来おそらく二週間近くも経とうかというこの件に関する報道や論説があまりにも少ない状態が続いています。

しかも、報道の腰が引けているばかりか、すぐ否定した、というような所が目立つような文になっていたりします。また、首相が任命したのですから、首相の意図がすぐ問題になるはずなのにその事を明確に指摘し、首相の責任を真正面から問う論説がありません。しかも、首相や政権がこの2人の発言を否定しないのは大問題であるのに、その事を指摘する論説もありません。「個人の考えであるから問題ない」というような政権側の言い訳をそのまま伝えているだけです。仮にもジャーナリストであるのならば、このような事とは徹底的に対決しなければいけません。

アメリカや、イギリスや、フランスの多数の報道機関が海外のニュースに対するものとしては異例に間髪を入れずにかなりのボリュームの記事で厳しく非難しているのは、戦勝国が戦敗国に対してというより、こうした事は世界の人道に対する挑戦であり、絶対に認められてはならないというジャーナリストの強い気魂がからだと思います。日本の報道機関にそうしたものはないのでしょうか?

さらに、なぜこのように、事態の核心をついた分析力のある鋭い報道ができないのか。予備知識のない日本との読者なら、たまたまNHKの経営委員になった人が、個人的見解で変なことを言っているとしか思わないかもしれません。首相が任命したというような事は事件の核心ですから毎回書くべきであるような事です。さらにあれだけの地位にある人がいうのだから、南京事件があったかなかったかは議論の余地のあることなんだ、とさえ考えてもなんの不思議もありません。

サッカーの試合のようにはっきりした勝ち負けのでないものなので、
質の優劣は普段はっきりしませんが、私が見るにかなり昔から、日本の新聞メディアは、分析力、ロジック、提案能力、などに於いて、いままでのところ、アメリカや西欧の高級紙に遠く及ばず、最近さらにモラル志操や気骨の点でもその差が大きく拡大しつつあるのではないかと憂慮されます。

このワシントンポストの報道に刺激されて、日本の新聞メディア関係者は、初心に帰ってなにくそと奮起し、社会のためにがんばってほしいものだと思います。

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