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・ よく吟味する必要のある疑わしい中国情報源、7つのタイプ

公開日: : ・ 日本から見た中国

日本国内にいて、中国に長期留学も赴任もされたことのない方。中国に4年半住んで断言できますのは、日本国内にいてごく普通にメディアや友人からの中国や中国人情報に接していると、とんでもなく実際の中国や中国人とちがったイメージができあがってしまうということです。

わたしは家族でさえ、困っていて、ええなんでこんなふうに思ってるんだ?違うと説明してもなかなか信じてもらえないというようなことがよくあります。間違った情報、偏った情報が次々裏書されて、なかなか変更しようもない確信に変わってしまう、ということがあるようです。

そういう状態を踏まえて、本当の中国人や中国の姿について知りたい気持ちのある方に、中国についての情報を吟味する場合に注意したほうがいいとわたしが思う点をあげさせていただきます。

特に前提として認識しておくべきは、もともと日本は特殊で外国を誤解しやすい上に、中国に関してはFirst handの情報をとれる人がひじょうに少ないことがあげられると思います。本屋に行って、中国語の棚が英語の棚のいったい何分の1くらいに当たるか見てください。しかも中級以上の書籍はひじょうに少ないです。

この意味するところは、中国在住者がアメリカ在住者に負けず劣らず多いのではと想像する中、中国語を満足にしゃべれる人が圧倒的に少ないということと思います。言葉が満足にしゃべれなくて現地になじめない人が多いと思われることから、中途半端な情報がたくさん入ってきていると思われます。

1. 中国語がしゃべれない、あるいはごく簡単な中国語しかしゃべれない人からの情報
中国語がしゃべれない場合、中国人の中国社会の在り方について正しく理解することひじょうに困難と思われます。日本語は日本社会の、国際的にはかなり特殊な構造を反映しており、その構造の中でしか中国人を理解できないと、いろいろ誤解が起こる可能性があります。

2. 中国に住んでいても、主に日本人社会としかつきあっていない人からの情報
大企業からの駐在員の場合、日本人居住地域に住んで、外資系のスーパーで買い物をし、日常接する中国人は自社の自分より地位が下の日本語がしゃべれる中国人、というような人は多いと思われます。こうした場合、ものの考え方は日本にいた時とさして変わらず生活されている場合が多いと思われ、じかに中国に触れているというよりも、日本国内にいた時の中国観の延長の中で生活しているという風になりがちかと思います。

実際のこのブログをご覧いただいている方の中にも、こういう状況の方は多い思います。基本的に日本人の価値観で中国人を見ていると、どうして彼らはこうしないのか、などストレスのたまることも多いのではないかと思います。しかしながら、彼らを見ている自分の価値観のなかに日本特有のものはないのか?と少し引いてみることにより、より中国人が理解しやすくなる、ということはあるかと思います。

3. 中国にちょっと観光でいってみた人からの情報
これは、情報源としては警戒していただいたほうがいいものです。たしかにこういう民間レベルの素朴な交流は大切にし、貴重なものです。しかし、一方で2~3日たまたまいった、ということですと、かなりの誤解をして帰ってこられている可能性もあります。例えば私がよく書くことですが、中国人は商店やスーパーのレジの人が愛想笑いをしません。これは初めての日本人にとってはたいへん不作法、挑戦的、怖いと感じるものですが、中国人の考え方では物の受け渡しなので、特に笑ったりする必要はないと考えているだけなので、お客さんに対する態度としてはニュートラルなものです。失礼でも悪くもなんともないので。日本ではレジの人でにこりともしない人は、まじめでない、ふてくされてる人である可能性はある程度高くなりますが、中国ではそういうことは全く判断材料になりません。こういう背景知識とかコンテクストが分からないところに、日本人と顔かたちは見分けつかないような社会なので、日本人と全く同じに理解して大誤解、ということが起こりがちです。

4. 中国に行ったことがなく、特に特別に研究したこともない権威ある新聞や雑誌の記者などの情報
これらの情報は、本当に警戒したほうがよいです。これらの人たちはプロフェッショナルですから自分にかなりの自信を持っています。しかし、欧米が日本と全く違った社会と考えていても、中国が体制以外にここまで違うとほんとに理解してる人は少ないと予想されます。顔が同じことから、中国についても日本と同じ論理関係で把握してよいと無意識に感じてる人多いと思われます。実際に中国にいると思いもかけなかったような論理関係が背後にあることを肌身で分かるのですが、それは実際見てみないと絶対分からないようなものです。結果的に理解していないことについて、いかにも深い知識があるように書く、ということになって、しかも元々私が上で書いたようにひじょうにおかしくなっている日本国内の中国像に依拠して書きますから、でてきた記事も実態とは相当に離れたものになっている可能性があります。しかも、記者が中国に関しては実際は素人(語感的に)であるにかかわらず、読者は一般のブログなどとちがって記事内容や主張をひじょうに権威あるものと受け取りがちなために、もっとも警戒すべきもののひとつと言えるかと思います。

あとは、新聞の中国特派員などの記事もある程度注意して見てかかったほうがいいと思います。真面目で尊敬すべき人も多いかと思いますが、もし年収1千万などであれば、都市部の中国人の平均年収日本円で60万円くらいかなという気がしますが、その計算だと15倍以上となります。ここまで差があると、生活が全く違ってきますから、中国の庶民の生活を理解するのはかなり困難という気がします。

5. 環球時報や、ネットの書き込み、中国共産党の発表に依拠して書かれた記事
中国について本当には分かっていない人が、充分な取材もせずに楽に手軽にそれらしい記事を書く方法として、 環球時報や、ネットの書き込み、中国共産党の発表に依拠して書くという方法があります。基本的には翻訳してコピペしてコメントつけるだけで、取材の必要がありませんから、ひじょうに楽な作業になります。取材せず、中国人の知人友人も必要ない。

「環球時報」は中国の人民日報系のタカ派の新聞で、国際的情報を多く掲載し人民日報系であることから、日本の新聞から権威ある新聞とみなされています。しかし、この新聞は中国国内でほぼ最もタカ派の新聞であって、主流ではなく、日本でいえば雑誌「諸君」の位置にあるもので、こういうものを真面目に読んでいる人は上海などでは多くありません。主に政府内でもあまり相手にされていない日本でいえば中国版の「石原慎太郎」のような極端な人の言説をとりあげて、田舎のタカ派をあおって収入としているような新聞です。またネットの書き込みでXXというのは、楽に目立つ記事を書くには、最も極端なものを選べばいいということになります。中国の新聞が、最も目立つ記事を書きたいと思って、日本のyahooなどで簡単に見つかるネット右翼の侮辱的言説をとりあげて「日本人はこう思ってますよ」などと書いたら、どういう結果になるか?そういうパターンのことを日本のメディアは結構無自覚によくやっているのです。

中国共産党の発表に依拠した記事。中国人はみな中国共産党の発表というのは適当に聞いておく、という態度をとっています。あれを言葉そのままに取るのは、日本人くらいです。内心では、はやくこんな対立はやめて仲良くしたほうがよい、と思っていても党内タカ派にも配慮して勇ましい言葉を並べるというのは日常茶飯事と思われます。中国共産党発表をあまり鵜呑みにした記事も警戒すべきです。

6. 継続的に中国、韓国について批判を繰り返しているが、それが収益化している新聞、雑誌、評論家
信念を持って、何かを批判し続けるということは場合によって大事なことです。しかし、こと中国韓国批判については、気をつけるべき点があります。これらの記事を好む人が少なくないため、産業として成り立ってしまうということです。そうなると、中国や韓国について批判する書籍、雑誌、記事を出し続けている限り、安定して収益が得られるという状況になってきます。新聞はまだしも、雑誌、評論家などというのは、ひじょうに不安的なところがあります。これに対し、中国韓国批判というのは常に一定の需要があるので一種の固定客として、収入の見込みとすることができます。これが堕落を生むのではないかということを私は疑っています。特にこういう記事を好む人たちは、中国語も韓国語もしゃべれず、両国にもいかないという場合が多いと思います。そうすると間違いを指摘されたり、品質についてチェックされることもない、誤解がひろまるほどに、後々さらに比較的気楽に書ける、というような悪循環があると思います。中国韓国批判が、生活基盤となってしまう危険。

7. 中国についておもしろおかしく取り上げる雑誌記事
我々の生活について、おもしろおかしいことというのは、時々ありますが、一般にそんなに多くあるものではないです。にも拘わらず、中国については大量のおもしろおかしい記事が書かれています。それで、おもしろおかしいとか滑稽ということは、一般に本人の気持ちにならない、ことによって初めて可能になることです。
例えば「安倍首相、またボクチンおなか痛いといってやめるんじゃないの」ということは、例えば、本人が難病で胃腸の障害で苦しんでいる、などという本人の内側のコンテクストに入ってはいかない状態ではじめて言えることで。わたしは安倍首相について批判したいと思う点も多いので逆から書いてみたものですが。このように「おもしろおかしく」書くということは、常に背後にある本当の論理関係を隠してみないようにして、または掘り下げないで初めて可能になることなので。たまにはそういう肩のこらない記事を見て楽しむのもいいとしても、本来このニュースの裏にはどんな論理関係があるのか、ということをよく考えてみたほうがよいと思います。みなさん、自分のことについて他の人から滑稽にあげつらわれたことはあるかと思いますが、その時自分は実際はどうだったのか、考えてみていただけるとよいかと思います。わたしは、雑誌などで書かれているおもしろおかしい記事が、それほどにおもしろおかしいこととは感じられないことも多いです。

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Comment

  1. ばばろあ より:

    以前に日本のメディアが取材に来たことがあるのですが、やはり中国についてのネガティブな情報がほしいんだろうなという印象を受けましたね。
    中国は日本よりも色んな人がいるから一概に言えなくて優秀な人も沢山いますよ言ったんですがあっさりスルーされちゃいましたね(苦笑)。
    なんか初めから「中国とはこうあるべきだ」「こんな風に生地を書きたい」という前提があってそれに沿うコメントを引き出すようなインタビューで、正直彼らは何の為にわざわざ中国まで来たのか?と思っちゃいましたね。日本で書ける生地をわざわざ中国に取材に来るなんて・・・。中国理解にはほど遠いですね。
    マスコミは中国のことを報道の自由が無いと批判するけれど日本の報道はどうなんでしょうね・・・。

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